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黒田日出男さんの『龍の棲む日本』(岩波新書、2003年)です。
武蔵国金沢文庫に所蔵されている、半分ちぎれた「日本」を描いた地図を題材に、中世の日本人の国土についての意識を考えたものです。
その地図は、日本のまわりを「龍」がとりまいているものなのですが、なぜそうした地図が作られたのかというところで、龍が通る穴が日本列島の地下にあって、それがあちこちに通じている(考えてみれば、東大寺の「お水取り」の井戸は若狭国に通じていますね)というのだそうです。
それはそれでおもしろいのですが、「龍」が列島をとりまいているということは、「龍」によって領域がはっきりと分けられているということにもなります。そこに、「蒙古襲来」がもっていた思想的な意味があるので、西日本で、対馬壱岐は、この金沢文庫の地図では、「龍」の外側に位置づけられています。もちろん、奄美や沖縄も「外側」です。
東日本の部分は現存しないのですが、たぶん津軽の外ヶ浜までは「龍」の内側にあるのでしょうが、蝦夷島はどうでしょう。
自分の国を特別視すること自体は、あってもいいのでしょうが、それが排外につながるきっかけも、こうした地図は秘めています。それが、その後の時代にもつながっていくということで、鎌倉時代はみなおさなければならないことが多そうです。