表と裏

鹿児島の南方新社というところから出た、『奄美の人と文学』です。
この本はおもしろいつくりで、前半は奄美出身の詩人、茂山忠茂さんが書いた小説4編、後半は参議院議員を引退してから鹿児島に住んでいる秋元有子さんの評論4編、となっています。ですから、著者も、茂山・秋元の共著という形です。秋元さんの評論は、茂山論をはじめとする、奄美・鹿児島ゆかりの作家についての論考です。
奄美は、かつては琉球王国に属していましたが、17世紀はじめの薩摩との戦いに琉球が敗れると、薩摩の直接統治下にはいります。そこで、黒糖を税として納めるシステムを押しつけられます。また、近代になってからも、第2次大戦のあと、本土から切り離されて、しばらくの間は本土復帰もかないませんでした。1927年に大島で生まれた茂山さんは、1944年に教員となり、1954年に本土に転勤になるまで、奄美で教職についておられました。そうした経験が、茂山さんの小説には反映しています。
沖縄とはまたちがった、本土からの収奪にさらされた島の人々の暮らしが、作品には流れています。そうした上に、たとえば今の大河ドラマで描かれるような薩摩藩の生活があったのかと考えると、薩長の倒幕・新政府とはいったい何なのかとも、考えていかなくてはならないようにも思います。今回のドラマは、そうした観点をどのくらい出していくのでしょうか。