「敗北」はない

鷲巣力さんの『加藤周一を読む』(岩波書店、2011年)です。
平凡社版の『加藤周一著作集』や岩波版の『加藤周一自選集』の編集にたずさわった著者による、加藤周一の著作と生涯を追ったものです。著作だけではうかがい知れない事実も出てきて、それはそれで興味深いものがあります。
晩年の『九条の会』への参加も含めて、加藤周一の軌跡は、著者のいうように、〈希望〉を捨てなかったといえるのでしょう。〈希望〉を捨てないかぎり〈敗北〉はない、と著者はいいます。その言は学ぶべきでしょう。

ところで、加藤周一平凡社の百科事典の編集長になったとき、平凡社の担当者は小林祥一郎だったそうです。この人、新日本文学会では1960年代はじめころに、けっこう〈過激〉な評論を書いていた人だったのですが、こういう仕事もしていたのですね。