女性文学の再考

田中貴子の「日本ファザコン文学史」(紀伊国屋書店)を読みました。この人は、中世日本文学の専門家なのですが、一般向けにもおもしろい視点でのものを書いています。この本では、中世の女性による文学作品をれいにとりながら、女性を縛る「父」的なものについて考察をしています。男が「父」性をもって女性にたいすることで、そのような社会的な縛りのなかに女性を追い込んでいくし、それにあわせて女性のほうも「父」の期待に応えようとする。そうしたわくぐみを追求しています。『無名草子』も、『とはずがたり』も、そうした面から読み解かれます。なかなか示唆に富んだものだと思いました。