幼いころから

田中貴子さんの『日本〈聖女〉論序説』(講談社学術文庫、2010年、親本は1996年)です。
日本の古典文学を引きながら、そこにこめられた、女性へのまなざしを論証しています。男性の目から女性が〈聖なるもの〉とされることは、それを〈ひきはがす〉欲求も同時にあらわれることでもあり、たとえば『伊勢物語』で、昔男と斎宮とが通じるスキャンダルも、そうした方向性で読まれているというのです。
女性が、社会的にどのようにみられるかというのは、今でも問題になることですが、そのように、現在に通じるものとして考えるとっかかりになるでしょう。
田中さんは京都に生まれ育ち、奈良の大学に進学したという、西日本の環境を身につけているかたなので、そうした根っこにあるものも、東日本の新興住宅地育ちの人間からすれば、同時代でもずいぶんと違った光景をみていたということになるのでしょう。そうした、人びとの心性のありようも、これからは考えなければなりません。