晦渋

保田與重郎『日本の文学史』(新学社、2000年、親本は1972年)です。
年末に香取神宮鹿島神宮に行ったときに読み始めたのですが、時間がかかりすぎました。
香取と鹿島は、天孫降臨の前の国譲りのときに、出雲に降り立った二柱の神様をまつった社で、どちらも神武天皇の時(もちろん、紀元前7世紀ということではありません)に創建されたという伝承があるところです。
そうした神道的な空間にあっては、それなりの理解もできなくはないのですが、現世の時間の経過のなかでは、保田の論はどうしても空論にみえてしまいます。保田の戦後の文章(特に1960年代に復活して以後のもの)は、文章自身が、わかりやすさを拒否しているように感じます。
個々の論点は納得できない点が多いのですが、ただ、文化は若死にでは伝承できない、70歳や80歳になって身につくものだということに関しては、同意できなくはないという感じです。60歳を過ぎてから手にできる文学的な蓄積は、決して遅すぎることはないでしょう。