分析

小林よしのり中森明夫宇野常寛濱野智史の4氏による討論本『AKB48白熱論争』(幻冬舎新書、2012年)です。
今年で還暦の小林さんと、新人類世代の旗手といわれた中森さん、それと若手、30代の宇野・濱野のおふたりと、けっこうバラエティーに富んだ顔ぶれといえましょうか。『サリンを撒かないオウム』というような過激な発言もあり、けっこう考えさせるものではあります。
たしかに、AKBの『総選挙』のほうが、よっぽど現実の選挙よりも公平かもしれないと感じてしまうところもありますし、メジャーであるために払っている努力に関しては、正しく見なければいけないところもあるでしょう。
ただ、〈大衆性〉をどうみるかに関しては、考えなければならない点があるでしょう。〈文学の大衆化〉とは、大衆小説を書くことではなく、書き手の層を広げレベルアップさせていくことで、読む力も高めていくことのはずですから、おなじことがアイドルの世界にもいえるとも考えられます。そこは、4人の論者たちが、言い切ってはいないようです。

あと、本作りとしておどろくことは、一切注をつけていないことです。あるのは『総選挙』における各人の得票と順位、それと前回の順位だけです。ここで4人があげている事象は、注に頼らずに自分でキーワードをさがして理解しなさいという、強烈なメッセージにもなっています。それも大切なことでしょう。