相手をよくみる

『古在由重著作集 第1巻』(勁草書房、1965年)です。
著者が、1930年代に書いた、「現代哲学」「唯物論唯物論史」「初期唯物論の形成」の三つの著書をまとめて収録しています。
唯物論の立場から当時流行していた「哲学」の実態を批判した「現代哲学」が読みごたえがあります。当時のドイツの、ナチス御用の哲学者の意見や、日本の〈流行〉していた哲学の人たちの考え方が、観念論の立場に立っていることをはっきりと解き明かしています。
鶴見俊輔さんが、これらの業績を高く評価していることで、最近有名になったのかもしれませんが、本当に立ち向かう相手が何で、それはどういう存在かを認識していくことは、とても大切なことなのだと思います。
今のような、いろいろな情報操作とも言うべきコントロールが陰に陽に行なわれている時代だからこそ、そうしたことは大切なのでしょう。横須賀での住民投票を求める署名が、直接請求をできるだけ集まったということも、そうしたコントロールではなく、しっかりと自分で考えたいと思っている人が多いことのあらわれなのだとも思います。

この著者が、晩年に「相手」を見間違えるという「混迷」をしてしまったことは、残念なんですが。