よりどころはどこ

布施祐仁さんの『災害派遣と「軍隊」の狭間で』(かもがわ出版、2012年)です。
今の自衛隊の現実を、隊員へのインタビューや、当事者の資料などを使って追いかけます。不景気になると志願者が増えること、その志願者を集めるために、広報官という任務の人たちが教育現場に食いこんでいくこと、意識をもって志願したけれど、実際には必ずしもいいことばかりではないという自衛官の現実が記されています。
ところが、そうした隊員たちを、米軍と共同して作戦行動におもむかせるために、意識づけられるのが〈八紘一宇〉だというのです。そんなもので国を守るという意識を身につけるというのはどんなものでしょう。
この前、南方熊楠が批判した神社合祀の話をここで書きましたが、この前の地震のとき、津波の到達点と神社との関係が話題になったことがありました。たしかある地域では、神社のあるところを結ぶと、津波から逃れられるぎりぎりのところになるというのだそうです。そうした、過去の災害とのつながりに関して、南海地震を経験した和歌山県で語られることはないようです。合祀で神社が、そうした経験を蓄積できなくなったからでしょう。そんなふうに、本当の民族の歴史や伝統を守る意思のない政府の掲げた破綻したスローガンをもちだすようでは、何も反省していないのだと思ってしまいます。