救い

金原ひとみさんの『マザーズ』(新潮社)です。
作家のユカ、モデルの五月、主婦の涼子の3人の母親を描いた作品です。ユカと涼子は高校のときの友人で、ユカと五月は仕事上の知り合いだったのですが、3人とも同じ保育園に子どもを預けることになり、そこで接点が生まれます。
けれども、ユカはドラッグにはまりますし、涼子は子どもを虐待する、五月は不倫相手の大学の非常勤講師の子を宿し、流産する。というふうに、彼女たちをめぐる状況は、現代の闇と紙一重のところにあるのです。ただ、彼女たちも、夫たちも、売買春にかかわらないのは、まだそこには、ましなのかもしれません。
もちろん、問われるのは母親だけではありません。とうぜん、そうした状態をつくりだす男たちにも、作者の目は向けられています。あるべき、というと硬くなりますが、こうであれば、という夫婦のつながりのありようも、追い求めようとしているようです。