現場ゆえ

野里征彦さんの『罹災の光景』(本の泉社)です。
野里さんは、大船渡市に住んでいて、大地震のときには、自宅は津波の被害にはあわなかったのですが、近くに住んでいた、寝たきり状態だった妻の兄に当たる方が津波にのみこまれてしまったのだそうです。
地震の当日から約1か月間の日誌ですので、当時の状況が生々しく迫ってきます。昭文社から出ている、『東日本大震災復興支援地図』と照らし合わせながら読むと、津波の襲った地域に何があったのか(野里さんの記述だと、地図よりもやや奥まで津波が浸入したとおぼしきところもあります)が見えてきます。現場での人のあつれきや、ガソリンをめぐる供給問題など、人であるがための悩ましさもあらわれます。