いろいろな場所で

南元子さん(1934-2009)の、『夢、そのとき』(本の泉社)です。
南さんは長く民主主義文学会の奈良支部で活動されてきた方で、昨年なくなられたあと、支部のかたがたが中心となって、『民主文学』や奈良支部支部誌に発表した作品から選んで本にまとめたということです。
南さんは奈良に住みながら大阪の小学校で教師を勤め、子育てがひと段落着いたら母親の介護をされたようなことが、作品からみえてきます。作品に描かれた、作者や母君とおぼしき登場人物の生活や、その周囲の人びとの姿は、たしかに戦後から現在への日本の国のようすを切り取っています。こうした、生活に根ざした作品を、日本全国いろいろなところで生み出すことが、たとえ商業文芸誌からはお呼びがかからなくとも、決して引けをとらない創造活動をつくりだしていくのです。それで食べていけるかという観点ではみえてこないところに、文学の意味もでてくるのでしょう。