どこを向く

『女性のひろば』4月号に、和田静香さんという方のエッセイが載っています。
先場所の優勝後会見のときに、白鵬がいったことばを扱いながら、横綱を擁護しています。白鵬の発言の本旨は、底流にある〈日本人至上主義〉への批判であり、それをわれわれは克服しようというのです。
和田さんの意見はわからないでもないのですが、けれども、横綱の発言をそう単純にとってもいいのかとは思います。
マスコミやファンのなかに、〈日本出身〉にこだわる意識があることは、否定はできません。横綱がそれにいらだちを覚えるのも、理解はできます。けれども、今の協会が、〈日本出身〉にこだわっているとは思えません。同じように入門時から十両にあがるまでは大部屋で生活するのですから、そのとき出身地がどこかということをいっていたら相撲部屋のシステムは崩壊します。実際、双羽黒が不祥事をおこして以来横綱になるのは連続優勝が絶対条件だったのを、それを改めたのも、鶴竜というモンゴル出身力士だったわけですから、今回の白鵬の発言を〈出身〉に関しての批判と単純にはとらえられないのではと思います。
横綱が協会への不満を述べるとしたら、年寄になるには日本国籍が必要だという規定ではないかと思います。自分が弟子を育てたいと思う気持ちと、国籍を変えていいものかという意識とが、白鵬のなかで争っていても不思議ではないでしょう。和田さんには、そうした方向からのきりこみがあってもよかったのではないでしょうか。