まるくなる

『麹町 二婆 二娘 孫一人』(中沢けい、新潮社、2014年)です。
新聞連載作品なのですが、2010年から11年の東京を舞台に、1923年・1935年・1959年・1971年・1995年うまれの5人のいのしし年の女性が住む家を描いています。配偶者とは死別や離別をしているので、女性ばかりが住むようになったということでしょう。
主役は1959年生まれの美智子さんというかたで、そのひとの視点から、世の移り変わりや、当時の事象をえがくので、最後は大地震でしめています。
中沢さんは、若いころは、「入江を越えて」や「水平線上にて」のような、細かい心理の震えを描くことが多かったのですが、10年くらい前の「楽隊のうさぎ」あたりから、やわらかい作品が中心になったようにみえます。それが、年齢を重ねるということなのでしょうか。作品発表舞台も、この作品は政党機関紙ですし、その前の『動物園の王子』は政党が発行する女性向け雑誌というようになっているのも、そうしたやわらかさが好まれるからでしょうか。それでいいのかとも、いうことはできますね。