書いてこそ

磯田道史さんの『天災から日本史を読みなおす』(中公新書、2014年)です。
各地の古文書や古記録から、噴火や地震津波、高潮や土石流などの記録を探り出し、現在の状況にあてはめていくというものです。もともとは新聞連載だったので、それぞれの記述は簡潔になっていて、読みやすいものにしあがっています。
それにしても、こうした検証が可能になるのは、記録がきちんと残っているからです。18世紀はじめの富士山の噴火を、江戸の状況から呼び起こせるのも、秋田藩の方がしたためた記録が、300年経っても読解できるからです。今の災害の記録を、300年や500年きちんと保管して、伝えられるのか、今の記録や情報は、横の広がりはあっても、縦のつながりに不安を覚えるのは、取りこし苦労なのでしょうか。