すみわけ

ナディン・ゴーディマ『ジャンプ』(柳沢由実子訳、岩波文庫、2014年、親本は1994年、原本は1991年)です。
親本は、ゴーディマ作品の翻訳としては早い方らしく、当時の解説が文庫本に採録されているのですが、ほとんど訳がなかったむねが書かれています。
アパルトヘイトの終末期にあたる時期で、当時の政権が、『ホームランド』なる怪しげな囲い込んだ土地をつくっていたころでしょうか、そうした時代の、さまざまな人びとの姿を描いています。〈襲撃〉を恐れて囲いをつくって自分たちだけの〈楽園〉をつくろうとするひとびとが陥る皮肉な事件や、さまざまな〈人種〉の間に横たわる複雑な感情、決して人ごとではないでしょう。
〈住み分け〉が、ヘイトなのだという、きわめて単純なことに気づかされるのです。