時差

大林宣彦監督の「廃市」(1984年)をケーブルテレビで観ました。原作は1959年に書かれた福永武彦の同名小説で、ほぼ原作通りの展開になっています。原作では、語り手が10年前のできごとを回想するという形ですから、直接作品発表とあてはめると、1950年ごろということになるのでしょうか。
映画にするのですから、当然、そこに映るのは1980年代の柳川市の街の風景です。けれども、作中でも、それは語り手(山下規介が演じています)の回想となっているので、1980年代よりも前ということになるのでしょう。それを、作中に登場する国鉄佐賀線がすでに廃線となって30年近く経つ2015年にフィルムを通してみるという、複雑な展開を感じてしまいました。
今は平成の大合併柳川市になってしまいましたが、当時は、国鉄筑後柳河駅も、西鉄の柳川駅も、柳川市内にはなかった(鉄道を通せない)ほどの町のすがたも、当時の面影になっているようです。