川にたとえる

なかむらみのるさんの『信濃川』(光陽出版社)です。
新潟県を舞台にして、ひとりの日本共産党員を主人公にすえて、その歩みを描いています。
主人公は、兄を満蒙開拓団で失い、母親とともに戦後の時代を生きぬきます。そして、その中で、共産党に入り、専従活動家となり、市議会議員になります。それが、戦後史とからめて、その人にとっての必然的な生き方であることをみていきます。
なかむらさんの作品には、みずからが仕事とした、郵政職員としての労働者の姿を描いた作品と、こうした、社会の変革のためにはたらく人たちの生き方を主に描いたものとがあります。いずれであっても、そこには、社会進歩を信じる人たちが、現状の困難さを引き受けながら、それでも未来への展望をもってすすんでいく、というところが、作者の考えているところなのでしょう。
そこを、てらわずに書くことに、なかむらさんの作品の中心があります。歴史の流れは、ゆっくりであっても止まらない、ということなのでしょう。