かつがれる

森茂暁さんの『闇の歴史、後南朝』(角川ソフィア文庫、2013年、親本は1997年)です。
南北朝が合一したあとの、南朝の末裔たちの動きを追ったものです。たしか、むかし花田清輝が「室町小説集」という作品のなかで、この後南朝にふれていたと思いますが、そうした物語ではなく、きちんとした史実として著者は追求していきます。
もちろん、すべての南朝関係者が独立のこころをもっていたわけではなく、力の差をすなおに認めて、幕府体制のもとで秩序に組みこまれることを選択した人たちもたくさんいます。けれども、それに納得できない人は、どこかの勢力に担ぎ出されて、反抗のシンボルとしておのれの存在価値を見いだしたこともあったようです。そうして、徐々に南朝につながる人たちは姿を消していきました。
こうした史実を掘り起こすのに、著者が使う材料の多くは、当時の日記です。膨大な日記群のなかから、必要な記述を探し出すのです。それを思うと、現代においてその役割を果たすのは、新聞記事でしょうか。どのような形で保存していけば、長期(この日記群はともかく500年以上の年月を生き延びているのです)の保存ができるのか、それも考えなければならないのでしょう。