バブルのきざし

井上ひさし『黄金の騎士団』(講談社、2011年)です。
1988年から1989年にかけて書かれていたのですが、そのまま中断してしまった作品だということです。
養護施設に育ったこどもたちが、こどもたちのために買おうとした佐久地方のとちを、リゾート開発のために買い付けようとする外資系とたたかう話です。
そのための資金を、こどもたちが先物取引でかせぐというのが、バブル期の作品だといえるのでしょう。
でも、きっと、作者はこの話を、『偽原始人』や『吉里吉里人』のような、バッドエンドにしたのではないかと思うのです。バブル景気のなかで、先物取引は破綻する方向にいくのではないでしょうか。
それを書きたくなかったため、作者は中断を選んだのこもしれません。