どうせなら

井上ひさしの『一週間』が新潮文庫になったようです。
この作品に関しては、前にも書いたと思いますが、北村隆志さんが、『季論21』に、実にていねいな論考を書いています。ひょっとしたら、文庫の解説でもいいのではないかと思っていたのですが、さすがにそういうことはなかったようです。
北村さんは、『一週間』という作品で使われている〈レーニンの手紙〉が、少なくとも井上ひさしは内容をまちがえて〈理解〉したまま作中に導入していることを論じました。今後、『一週間』についてなにごとかをいうのならば、北村さんの示した論拠を打ち砕かなければならないほどのものだと思っています。でも、そうした人はあらわれていません。文庫の解説は、北村さんの論考が現れる前に書かれた大江健三郎さんの文章を転載しています。そこが落としどころということになるのでしょうか。