井の中の

許広平『暗い夜の記録』(安藤彦太郎訳、岩波新書、1973年新版、原本は1947年)です。
1941年12月、対米英開戦をした日本は、上海の租界を接収します。そして、そこに住んでいた魯迅の妻である著者を連行し、約3か月にわたって身柄を拘束し、魯迅の日記その他を押収しました。そのときの経験を、戦後まもなく記録としたものです。魯迅の日記は、釈放とともに返還はされましたが、そのとき1冊紛失してしまったそうです。
日本軍が「勝利」を実感できた短い期間だったと、今ならばいえるわけですが、当時は、こうした日本軍による支配がどうなるかわからず、著者も内山完造に協力してもらうことで、釈放を可能にしたのです。内山による当時の証言も、巻末に付載されているので、両側から実態を明らかにすることもできます。
日本が戦時中何をしたのかは、知っておかなければなりません。