10年

9月11日といえば、どうしても10年前のこととか、1973年のチリのアジェンデ政権の崩壊とか、いろいろと出てくるのですし、リービ英雄さんの「千々にくだけて」で、〈ground zero〉を主人公が〈ばくしんち〉と日本語で変換してしてしまうこととか、あるのですが、こういう10年もあったのだと、新聞記事をみて気がつきました。
BSEのことです。ちょうど10年前に、日本の牛からBSE感染が発見されました。それ以来、今回の稲わらに至るまで、日本の牛は、さまざまな困難に遭遇してきました。たまたまなのか、作者の計算かはわかりませんが、旭爪あかねさんの『稲の旋律』3部作の、最初の「稲の旋律」は、2001年9月10日付の千華の手紙でしめくくられています。千華の心の動きからすれば、たしかにBSEやテロを作品世界に入れるのはかえって邪魔になることは間違いないところなので、これでよかったのだと思います。それは、その後の「風車の見える丘」や「月光浴」で追いかけられることになるのですから。