流れてゆく

笙野頼子さんの『だいにっほん、ろりりべしんでけ録』(講談社)です。
笙野さんは、変った作品を書いているのですが、そこには、作者なりの、現実に対する批評があります。芥川賞受賞作の「タイムスリップ・コンビナート」では、海芝浦駅に向かう主人公の意識を通して、鶴見という、工業地帯の街の現実が捉えられていました。
今回の作品は、「おんたこ」批判という形で、今の「文学」状況に対しての批判となっているのですが、性的なものを過剰に出そうとしている「文学」への批判という、方向性はわかるのですが、それが『ドイツ・イデオロギー』批判に流れていくというところには、どうしたのかなと思うところもあります。なにも、それを出さなくても、主張することは主張できると思うのですが。