二つの声

リービ英雄さんの『越境の声』(岩波書店、2007年)です。
ご存知の方も多いでしょうが、リービさんは、日本語で小説を書いています。みずから日本語で書くことを選び取ったということは、日本語が、普遍的な思考を可能にしていくことばであることもしめしているのでしょう。この本の中では、日本語とドイツ語とで小説を書いている多和田葉子さんとの対談もありますし、〈9・11)体験をさぐったエッセイもあります。
このような仕事は、もっと知られるべきではある(けっこう大学入試にリービさんの文章は出題されています)と思うのですが、たとえば、『星条旗の聞こえない部屋』の文庫本が、講談社の文芸文庫なので、189ページで1100円という価格設定となっていることも、今の日本の出版状況なのでしょう。