積み重ね

藤井貞和さんの『言葉と戦争』(2007年、大月書店)です。
戦争に関する藤井さんの考察そのものは、いろいろと議論していかなくてはいけないのでしょうが、巻頭書き下ろしの「言葉と戦争」で、「日米防衛ラインのこれからの無力化」を課題としていこうとする藤井さんの考え方には、納得できる面があります。
また、ハルオ・シラネさんとの往復書簡(メールですが)では、文学研究の国際化か語られ、日本文学をきちんと世界に発信していくことの重要さが語られます。訳者の好みで恣意的に紹介されることへの懸念は、正当なものでしょう。
どこで読んだのか不正確な話ですが、中里喜昭さんが前に、エフトゥシェンコが来日したときだかの話で、(そのときだと思うのですが)、土井大助さんの詩には謡曲の影響があるといわれてびっくりしたとかいうことを書いていたと思います。(ものすごいあいまいな話ですが)実際、過去の伝統(自覚しているかどうかにかかわらず)の上に現在はあるのですから、そこを抜きに春樹だばななだといっても、それは本質ではないのでしょう。もちろん、それは、逆もいえるので、私たち自身も、知らなければいけないことは多いのでしょう。