形而上

中山研一さんの『現代社会と治安法』(岩波新書、1970年)です。
この本自体は、明治以来の日本の治安法の説明と、現代(1970年)の課題を述べているのですが、治安維持法が、「国体の変革」を罰せられるべき対象としていることを考えると、治安法というものは、「人間は固定した考え方をもっていて、それに反するものは排除されるべき」という考え方につながるもののような感じがします。それは、現在でいえば、「少年」に対しても厳罰でいくべきだとか、心を病んだ人は隔離しておくべきだとか、そういう考え方にもつながるようにみえます。さらには、「就職するなら即戦力にならないといけない」と、企業が人を育てることを放棄するような発想にも結びついていくのではないでしょうか。大学入試も、自己推薦やらAOやらというのも、「大学にはいってから教養をつける」というのではなく、すでに確立した自己をもたなくてはいけないことを要求しているように見えます。
『自己責任』がはやる世の中の実際は、こうして治安法にからめとられていくのではないでしょうか。