気概

岩波文庫の『石橋湛山評論集』(1984年)です。
石橋湛山は、戦後政界入りして、総理大臣もつとめた人ですが、病気のためにすぐに辞職しました。この評論集には、1910年代から40年代までの、ジャーナリストとして筆鋒をふるった時代のものが主に収録されていて、読みごたえもあります。
予言者のことばが正確であるほど、世の中に受け入れられにくいのは、カッサンドラの昔からかわらないのでしょうが、第一次世界大戦のどさくさにまぎれて、中国に過大な要求をした前後の、日本は在外領土を持つ必要はないという主張には、90年をへだてた今日でも学ぶ必要があるかと思います。
もちろん、細かく読むと、朝鮮や台湾に対する態度も、1920年代と1930年代には差がありますし、戦後の文章には、保守党の領袖としての立場から、安保条約のもとでの平和共存という選択を説くものもあります。

こうした文章を読むと、「保守政治家」のひとつの姿がみえてきます。第二院で少数派になったからといって、「対立」党に『大連立』をもちかけるような人たちばかりが政治家ではないのですね。