発想の根本

ル・コルビュジェ『伽藍が白かったとき』(岩波文庫、生田勉・樋口清訳、原本は1937年、親本は1957年)です。
建築の細かいことはわからないのですが、著者の、新しい時代に適合した建築や都市のありかたにかんしての所見は、姿勢として考えることがありそうです。
当時のソビエトロシアに関しても、決して意匠として新しくはないという指摘など、スターリン時代のことを考えるとなるほどと思わせるものもあります。
アメリカの都会をみて、未来の都市は歩車分離で、特別の自動車道路をつくり、街区は集中させるべきだということも、ある意味ではいまの首都高のような空中に自動車専用道路が走り回る『未来都市』的なイメージの先取りともとれるのかもしれません。そういうところに、それこそパリのアパルトマンのイメージを持っていた著者の経験が根っこにあるのかなとも思います。
壁で支えている建物から、柱で支え、窓を大きく取る高層ビルという光景への転換が、20世紀後半の風景だとしたら、著者の思いは半ば実現したともいえるのでしょう。
人民戦線内閣が登場した時代、そうした「転換」が時代の熱気を作り出したのかもしれません。それは、ナチス的なものが一方では存在している中で、それへの対抗になる可能性をもっていたのでしょう。