継承すること

山崎正和さんの『室町記』(講談社文庫、1985年、親本は1974年)です。
山崎さんは、考え方としては保守に属する人だと承知していますが、この本の中で、室町時代現代日本につながるもののはじまりの時期としてとらえています。もともと週刊誌のコラムがもとらしいので、目新しいことが書かれているというわけではなくて、入門書的なところがあるのですが、日本の文化を著者なりにとらえようとしています。
乱世が文化を生んだというとらえ方はいささか単純だとは思いますが、(中世のいくさの実態については、最近の研究でいろいろと明らかになっていますし、前にも書いた『おあむ物語』などの回想記でも知られる点があります)この時代の見取り図としては、わかりやすいものになっています。
権力と権威とを微妙にわけるバランス感覚という点から天皇家を評価する山崎さんの意見には、少し考えたいところもあるのですが、天皇家がなぜ続いたのかを考えるきっかけにはなるでしょう。男の子が生まれて、継承の議論も少し落ち着いてはきましたが、そこも含めて考えることを忘れてはいけないのでしょう。