過酷な時代

金石範さんの『地底の太陽』(集英社、2006年)です。
『火山島』全7冊も読んでないのに、その続編のこの作品だけ読むのは少し気がひけているのですが、まったく手つかずというのもなんなので、読んでみました。もちろん、これだけで独立した作品として読むことができます。
最近のはやりは、北の政権の悪いところばかりをあげつらうものですが、済州島の「四・三事件」のことも考えると、南の政府も、最初はひどかったのだと、あらためて思います。それも含めて、日本の植民地支配の後遺症だと思うと、この作品で、主人公が苦悩している環境で、そういうことも知らぬげに日本社会が動いているということも、認識しておかなければいけないのだと思います。作品の中で、朝鮮学校を閉鎖させようとする当局の動きに対して、神戸ではたたかってまもっていたが、大阪はたたかえなかったという記述があります。下山・三鷹・松川と続く謀略的な動きと、朝鮮学校閉鎖とが連関しているということは、後知恵では何とでもいえるのですが、当時はそれがみえなかったのでしょうね。
そういう「今から思えば…」とならないように、よく見きわめていかなければいけないのだと思います。