世話を焼く

引き続き、吉開さんの『青春の肖像』(新日本出版社、1973年)です。
『葦の歌』の続編とも言うべき作品で、主人公は引き続いて麻子さんで、彼女が繊維関係の業界紙の記者として就職し、そこでの生活と社会変革へのたたかいと、その中で伴侶となる男性と出会っていく姿を描いています。作品世界は、1961年から1962年にかけての時期です。
『葦の歌』で登場した学生たちは全く出てこないという点で、伏線の回収がされているとは言いがたい、というよりも、作者自身に二つの作品世界を密接なものとする意図があまりないように感じられます。
大学を卒業して就職する麻子さんですから、年齢は23から24歳というところです。すると、両親をはじめ、周囲の人たちは、麻子さんがすぐにでも結婚して、場合によってはいわゆる〈寿退社〉するものだという眼でみています。特に両親は、お見合いの話を次から次へともってきて、麻子さんを困らせますし、麻子さんが職場の状況を通じて入党した日本共産党の組織も、まだ独身の地区役員と麻子さんを結婚させようとして、いろいろと二人だけの時間をつくるように配慮するのです。
〈クリスマスケーキ〉なることばが使われていたのは、1980年代のはじめごろにもまだあったような気もしますが、そうした時代には、その時代なりの結婚観があったのだということでしょうか。麻子さんが入社した業界紙の会社には、女性社員の若年定年制がしかれています。それと麻子さんがどうたたかっていくのか、そうした積み重ねが今をつくっているのだと、今になってみれば思えるのです。