微妙な差異

『昭和大相撲騒動記』(大山真人、平凡社新書)です。
著者は相撲を専門に追求しているわけではなくて、自分の出身の山形県からでた、昭和初期の関脇力士の出羽ヶ嶽について書いたことが、この本につながったようです。
本の内容は、1932年におきた力士の争議、「春秋園事件」について書いたものなのです。この事件についてまとまったものは少ないので、その点では貴重なものかもしれません。
しかし、こうした概説書の宿命でしょうか、誤りが散見するのです。
力士名の誤植があります。天竜が「天龍」、磐石が「盤石」などです。
それと、事項の誤りがあります。控え力士(次の取組に出るなどの理由で土俵下で待機している力士)には物言い(行司の裁定に異議を申し立てること)をつける権利があり、これは現在でも生きているのですが、それを『今はない』と解釈できるような記述をしたり(とはいっても、ここ30年で、貴ノ浪がつけた1度だけしかありませんから、実質ないも同然ではありますが)、昭和初期の番付編成方法について、微妙な書き方をしたりとか、知っている人からみると、少し雑だなと思うところもあるのです。
まあ、あまり気にしすぎるのもいけないのでしょうが。
本質の話としては、力士の「争議」がこれを最後に70年以上も起きていないことです。著者も、プロ野球の世界と比較して書いていますが、相撲界の抱える問題点は認識しておく必要があるでしょう。
今場所も、暴力沙汰をおこした幕下力士がすぐに引退に追い込まれましたから。