批判はたしかに自由だが

小林多喜二を批判する本が、彩流社というところから出ました。著者は畑中康雄という人です。この人は、北海道の炭鉱での労働運動の経験があるそうですが、新日本文学会にいたころは、武井昭夫の流れにいた人です。未来社から出ていた武井の著作集の月報に文章を書いていたことがあります。
その人が、今はもう新日本文学会とは関係がないようです。それでも、多喜二について書こうという意識はあるようですが、内容は多喜二の作品のなかに描かれた「たたかい」が、破綻しまくっているというのです。
店頭でみかけて少しめくってみたのですが、最近のプロレタリア文学の流れをくんでいるものに対してはまったく知らないようで、それを逆に堂々とひけらかしているには恐れ入ります。さらに、『党生活者』で毒ガス戦の物資が「倉田工業」で作られていることに対して、『都会の真ん中でそんなものが作られているとは剣呑な』というような表現で、それを否定しようとしています。あげく、この期に及んでまだ「藤倉電線」といっているのですから、最近の動向について知らず、それをなんとも思っていないということはわかります。
そうした人の本に、本体価格2800円を出す必要があるのか、少し考えています。