生きることの大変さ

柴垣文子さんの作品は、この前「鎮守の杜」についてこのブログで言及しましたが、その作品も含めて小説集『おんな先生』が光陽出版社から刊行されました。『民主文学』掲載の6作品が収録されています。若い教師を主人公にして日の丸・君が代問題を考えた「わたしの旗」以外は、木原康雄・澄子という教師夫婦(康雄は中学、澄子は小学校の教諭です)が中心人物になった作品で、二人の住む京都府の最南端の山村が舞台になっています。
学校というのは不思議な場所で、子どもたちには責任のないことを(親や社会の責任に類するはずのことを)子どもたちが引き受けて生きているところです。そうした大変さを見るしかない教師の姿を、柴垣さんは描いています。つなげて読むと、そうした作者の心境がよくわかります。「鎮守の杜」について厳しいことを書きましたが、このつながりの中では、康雄がやはり教師としての自分という立場を、知らず知らずのうちにとっていることが、作品世界を複雑にしてしまったのだと、それはそれで康雄としては当然の動きだといってよいのでしょう。そう考えれば、つじつまはあいます。その康雄の動きが、現在の神道と淫祀邪教との関係を認識するのに適当なのかは問われることなのでしょうが。
すっきりと読める作品集です。