続かなかった

今年のセンター試験の小説は野上弥生子「秋の一日」でした。年譜によれば、1912年1月の『ホトトギス』に掲載されたものだそうです。
たぶん、作者の身辺に取材したものなのでしょうが、長男の素一さん(1910年1月生まれ)が、数え年2歳の秋のこととみれば、つじつまがあいます。満で1歳10か月くらいなら、この程度のカタコトは口にできるでしょう。絵の虎を見て怖がるのも道理です。もちろん、ここに出てくるある画家の義妹にあたる亡くなった友人が実在しなくてもかまわないわけです。20世紀初頭の、あるレベルの人たちの生活が出ているという点では、若書きではありましょうが、おもしろい題材を選んだものだと思います。
ただ、いままで何年か、作品の全文を掲載することをやってきたのですが、さすがにネタもつきたのでしょうか。今年はだめでした。それはそれで仕方のないことではあろうかと思います。