月にかわって

『児女英雄伝』(立間祥介訳、平凡社中国古典文学大系、1971年)です。
19世紀半ばごろの作品なのだそうですが、女性ながらに武芸の名手が、危機に陥った名家の息子を助け、その後その男性と結ばれると内助の功を尽くして、彼は科挙に合格して、一家が栄えるという話です。
以前、この大系に収録された『三侠五義』について、ラスボスとの対決を前に打ち切られた少年マンガみたいだと書いたことがありますが、その伝でいえば、これは少女マンガといってもいいのではないかと思えます。自分の力を発揮した女性が、男性と結ばれると良妻賢母へのみちをすすんでいくというのは、ちびうさを抱えてたたかう月野うさぎを連想させるものがあるのです。
最後に夫が科挙に合格していくという点では、既存の価値観にのったものではあるわけですが、そういうことも含めて、娯楽作品としてはそれなりに成熟しているということでもあるのでしょう。
それでいいのかというのは、別問題です。