記憶の質

渡辺武さんの『戦国のゲルニカ』(新日本出版社、2015年)です。
大阪城博物館にある、黒田家伝来の「大坂夏の陣図屏風」に描かれた戦の実相を追求したものです。戦争が武士のみならず、民間人にも実質的な被害をもたらしているようすが、屏風には描かれています。それだけ、この戦がもたらした惨禍にかんして、記憶しておこうという意図がみえてきます。前にも、「おあむ物語」や「おきく物語」のような直接的な戦争体験というだけでなく、後世の記録にも、この戦がもたらしたものが描かれていることを述べた記憶がありますが、それだけ、国民的な記憶としていくさがあったということなのでしょう。その重みを、忘れることはできません。