大義名分

内藤湖南『中国近世史』(岩波文庫、2015年、親本は1947年)です。
もともとは著者が1920年代に京都大学で講じたものを没後に活字化したものなのですが、10世紀から14世紀前半のころの中国を、近世社会のおこりとして論じるものになっています。この時期の中国の歴史というと、どうしても宋を中心としたものになり、遼や金のような、遊牧民族由来の国については、叙述されることが少ないのですが、著者は、そこも含めて中国社会としてバランスをとって記述しようとしています。たしかに、12世紀後半から約100年の間、黄河流域を支配していたのは金国ですから、南宋は地方政権に過ぎないといわれてもしかたのないところでしょう。それが〈正統〉とされる朱子学的発想にとどまっていては、みえないものもあるでしょう。そうした論点は、14世紀の日本を語るときにも、同じような観点でものをみてしまうことにもつながるのかもしれません。それでいいのか、立ち止まる必要があるようにみえます。