模索

岩波版の新書判『二葉亭四迷全集』(全9巻、1964年から65年)がそろいで手に入ったので、ひさしぶりに「浮雲」を読んでみました。リストラされてひきこもる、という文三の姿は、決して全面肯定されているわけではないという、最近の動向も踏まえたうえでのことですが、作品世界をどのように完結させるのかということに対しての、二葉亭の不確信がやはりあったように思います。勧善懲悪的な終わり方はありえないのですが、だからといって、『当世書生気質』のような、戦争で生き別れた兄妹が再会する的な終わり方もできない。
それが逆に、現代的な終わり方になったのかもしれません。腹案にあったようなつづきを書けば、蛇の足になったのではないでしょうか。