スタートライン

政治小説 坪内逍遥 二葉亭四迷 集』(現代日本文学大系、筑摩書房、1971年)です。
最近は文学全集はすっかりはやらなくなって、古本屋で1冊100円という値段で並ぶことも珍しくなくなりました。実は、この本も、そうして入手したのです。
ここで「政治小説」として取り上げられているのは、宮崎夢柳の「自由の凱歌」というフランス革命に材をとったものと、矢野龍渓の「経国美談」の前篇。これは古代ギリシアが舞台です。
近代文学の出発をどこにおくのか、こうした文学全集をどこからはじめるのかは、いろいろと話題となるのでしょうが、開化期の「西洋道中膝栗毛」などよりは、ねらいがはっきりするように見えます。
小説神髄』などと、こうした政治小説、それから曙女史の「婦女の鑑」のような作品などが混在していたのが当時の実情で、その中から、「浮雲」が抜け出てきたという形になるのでしょうか。
幸田露伴に「硯海水滸伝」という、この時期の作品動向をパロディ的に描いたものがありますが、それも同時代の証言として、みていくとおもしろいのかもしれません。ただ、そうした中で、文学の価値を位置づけようとしたのが、その後の近代文学をつくっていってということは、みておかないと、矢野龍渓の過大評価というところに迷い込んでしまうことになるのでしょう。