線引き

有吉佐和子『日本の島々、昔と今。』(岩波文庫、2009年、親本は1981年)です。著者が1979年から80年にかけて、日本の端っこに近いさまざまな島を訪問して、その地域の実情をたずねたルポルタージュです。岩波文庫にしては、めずらしく解説などの文章がまったくついていません。
30年以上も前のものですが、内容は古くなっていません。小笠原の父島では、台湾漁船のサンゴ採りが問題になっていますし、海水温の変化によって、獲れる魚種が変わることが、あちらこちらで話題になります。
排他的経済水域のことが話題になりはじめたころですから、どうしても漁民の生活にとっては死活問題になります。竹島尖閣のように、今まで何の問題もなく漁業をいとなんできたところが、ある日突然入れなくなったり、規制が厳しくなったりする、そうした実態が明らかになります。海からの恵みのありようは、もっと考えなければならないでしょう。特定の魚ばかりが人気になっていればいいというものでもないのですから。