応急処置

本田由紀さんの『もじれる社会』(ちくま新書)です。
この間の、さまざまな媒体に発表した文章を集めた論集ですが、本田さんの持論である、戦後の日本社会を支えていた会社・学校・家庭のトライアングルが崩壊したという観点から、これからの教育や家庭のあり方に対して物申すというスタンスをつらぬいています。
このトライアングル、政府が若者の成長に責任を持たないという体制で、かつては企業が雇用を保障するという流れが、教育の動機づけになっていたのが、雇用の流動化とともに崩壊したわけです。
この前、あるところで、京都大学のキャリア教育を推進する方のお話をうかがう機会があったのですが、そこでは、自分は教育社会学の人とはちがうのだといいながら、社会の求める人間としていきるために、今までの教育方法を再考しなければならないという観点でのお話でした。
たしかに、違った側面からではありますが、現在の社会が変換された状態にあることは、ある程度一致した認識なのでしょう。
政府が若者の成長に責任をもたない体制を変えるつもりがないのは、奨学金問題ひとつとってみても明らかなわけですから、それに対して、どうしていくのか、それを考えるには、本田さんの分析は必要なものでしょう。