向き合い方

佐々涼子さんの『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』(早川書房)です。
津波で被災した日本製紙石巻工場の再生のドキュメントです。被災した工場がどのように再起したか、石巻の野球部がどうたたかって都市対抗に出場したか、というように、そこに至るプロセスを取材したものです。
もちろん、いい話ばかりではなく、地震の直後には、町のなかの商店を荒らしたり、自動販売機を金属バットやゴルフクラブで破壊して中のものを奪ったりした人がいたことも、きちんと取材しています。
被災した工場は、ともかくも再起して、今は紙を生産しているわけですが、そのプロセスのなかで、はたらく人がどういう境遇にあったかということが、やはり考えなくてはいけないのではないかと思います。というのも、東喜啓さんが『被災大企業』(光陽出版社)で題材にしたソニーでは、被災を口実に非正規雇用の労働者を雇い止めにしているからです。
日本製紙にはそういうことがなく、工場がそれこそ一丸となって、復興に挑んでいたのならいいのですが。