こりない

『奈良世界遺産住民運動』(新日本出版社、2000年)です。
1998年の奈良の文化遺産世界遺産に認定されたことをうけて、その原動力の一部を担った、住民による遺跡保存の運動の歴史と現状について触れています。1960年代の近鉄の車庫づくり計画のころからの、開発と保存とのせめぎあい、奈良県下各地でおこなわれた遺跡破壊のありさま、見せかけの「保護」の実態など、いろいろな〈事件〉があったことをしのばせます。
最近も、平城宮址を舗装しようという動きがあるという話ですが、文化遺産の価値は、現在の学問レベルですべてくみつくされているわけではないのですから、そのままの形で将来の〈新発見〉の余地を残しておかなくてはならないでしょう。そういう大計をもっているのかどうか、それは遺跡だけのことではありません。