椅子取り

田島一さんの『続・時の行路』(新日本出版社)です。
〈三ツ星自動車〉の派遣切りに対してたたかう労働者の姿を描いた作品なのですが、この作品では、提訴した結果、地方裁判所で負けてしまいます。時期を限った労働契約なのだから、雇い止めになるのは当然だというのが、裁判所の判断なのです。
実際、このところの裁判の多くが、〈雇い止めは単なる契約期間の終了なのだから、それに対して文句を言うな〉的な判決が下されています。いままで正規雇用の労働者がやっていた仕事が、非正規雇用の人に置き換えられて、職場の中での非正規雇用の割合が高くなっていても、そうした職場の実情がかえりみられることは少ないのです。
作者は、それでいいのかという気持ちで、作品に向かっています。〈期間を定めた雇用〉が横行する世の中でいいのかという問いかけは、忘れられてはいけません。手続き論ですませることではないのです。