南の海

宮内泰介、藤林泰のお二方の共著、『かつお節と日本人』(岩波新書、2013年)です。
かつお節自体は古代から日本で食されてきたわけですが、この本では、近代のかつお節づくりに南洋産のものがどのようにかかわってきたのかを中心に述べています。特に、削り節の形で一般消費者向けに販売されるようになると、南洋で脂がのっていない状態で漁獲したカツオを材料にしたほうが、一般向けの製品になりやすいのだそうで、その点から、南洋産の比重が高くなっているのだそうです。
明治以来の〈南進〉の流れは、意外と深い(オーストラリア北部での真珠とりの場合も、最盛期は100年前だそうです)ので、そうしたことも含めて、日本の近代は考えなければならないのでしょう。岡本かの子の「河明り」も、主人公は新婚旅行に南洋にでかけるのですし。