地の利

須賀田省一さんの『野田の文学・野田争議』(野田文学会)です。
野田争議というのは、1928年にあった、千葉県野田のキッコーマン醤油の会社で起きた大争議で、当時は浜松の日本楽器と並んで話題になったものだそうです。
この争議について書かれた文章を探るのが、この本の目的なのですが、単に直接的に題材にしたものだけではなく、エピソードを換骨奪胎したものも、著者は発掘しています。それは、小豆島出身の作家、黒島伝治の作品で、島の醤油工場を舞台にした作品の中には、野田の争議のエピソードを使ったものもあるのだというのです。
そういうものや、地域誌で争議の思い出を語ったものを発掘するなど、著者の調査は行き届いています。大きなできごとの記憶としても、とらえられるものでしょう。
全国どこでも、そうした語り継がれるべきできごとはあるのではないでしょうか。群馬の伊勢崎の、多喜二奪還事件も、最近話題になりましたし。