玄人ということ

『右遠俊郎文学論集成』(新船海三郎編・発行)です。
昨年亡くなられた右遠さんの単行本未収録の評論などを集めたものです。主として『民主文学』掲載のものが多いのですが、それ以外にもさまざまな紙誌に掲載されたものもあります。
文学における専門性とは、必ずしも専業作家であることを必要とはしません。藤枝静男は医師としての業務を全うしましたし、坂上弘は定年まで企業に勤めていました。けれども、かれらの文学が素人でなかったことはいうまでもありません。
右遠さんは、この本の中に収められた「玄人と素人」という文章を書いています。そのなかで、玄人がその専門性を生かして、俗物性を拒まねばならないといいます。それだけ、玄人には覚悟が必要だということでしょう。右遠さんは、そのことをみずからの生涯をかけて追求していったのでしょう。