大げさかもしれないが

短編集『光は大地を照らす』(胡万春、伊藤克訳、新日本出版社、1963年、原著は1961年)です。
〈中国革命文学選〉なるシリーズが1960年代前半にでていたのですが、そのなかの1冊です。著者(1929−1998)は浙江省出身で、鉄鋼生産の労働に携わりながら小説を書き始めた人だと、解説(津田孝さんによるものです)に書かれています。ですから、収録された作品も、ほとんどが鉄鋼生産の現場を舞台にしています。
書かれた年代からみれば、なにごとにも〈党〉が出てくるのは仕方がないことでしょうし、そこに比重をおいた作品となるのも、当時の中国ならばありえることでしょう。
けれども、作品の内実は、労働者として生産をあげるためにどのように仕事に向かっていくのか、ということを通して人間の成長を描こうという作者のこころもちが、根っこにあります。その点では、忘却のかなたに追いやるには惜しいものだといえるでしょう。
その後、登場人物たちがどう中国の現実を生きていったかは、また別の問題ではあるのですが。